東ティモールの新しい学校設立の協力者のみなさまへ

東ティモールの新しい学校設立の協力者のみなさまへ
一聖イグナチオ学院(中学校高等学校)・聖ジョアン・デ・ブリトー教育大学―

東ティモール・聖イグナチオ学院基金
現地世話人 浦 善孝

皆様はいかがお過ごしでいらっしゃいますか。このニュース・レターがみなさまのお手元に届くのは、晩秋の頃だと思います。忙しくてニュース・レターの作業が遅れてしまいました。聖イグナチオ学院中学校高等学校は今年開校11 年目を迎えておりもう新しい学校とは言えなくなってきて、教育の実質を固めてゆく時期になりました。一昨年までは教頭・事務長を務めていましたが、今年から教頭は他の先生にお願いし、事務長職だけにしました。さらに10 年が経ち、校舎のメンテナンス工事や校内の器具漆器等の充実、10 年以上も続けて同じ海外の援助組織から経済的援助を受け続けているのでそれらの組織との財務についてのやり取りが増加し、来年からは授業も辞める必要がありそうです。今年は高校1 年生に週8 時間教えていましたが、これが最後の教員生活の授業になるでしょう。

聖イグナチオ学院基金もすでに11 年の歴史があります。この間、皆様からの継続的なご支援を頂くことができました。こころから感謝して、お礼もうしあげます。ありがとうございます。奨学金、被服費・交通費の支給、さらに職員室の机や棚、図書館の本棚や机などのために支出して参りました。当地では教科書も満足にないので、教科書を印刷する費用のご援助も継続的に頂くことができました。加えて昨年からは、教職員への特別手当を支給するための原資のご寄附もいただけるようになりました。このように皆様からご支援をいただいて、「貧富の隔たりなく、学びたいすべての子どもたちに良い教育を提供できるきちんとした学校の東ティモールにおけるモデルスクールとなること」ということが実現しつつあります。そして本校の取り組みが認められたのか、思いがけず今年5 月の独立記念日に本校は東ティモール政府から功労賞の勲章(Medalha de Mérito)が授与されました。

創立20 周年へ向けての次の10 年間は、知的養成に意を注ごうと校長のイザイヤス神父さんと話しています。先ずは、教育の質は教師に拠ります。東ティモールでは教職は薄給なので、大学卒業生にとって最後の選択肢です。2020 年から21 年の2 年間で本校教員の25% が薄給を理由として離職し転職しました。能力のある良い先生たちが少しでもよい給与の職を見つけると、いとも簡単に去ってゆきます。そのために昨年からは、ご寄附を原資に特別手当の支給を開始し、同時にこれまで以上に教員養成に取り組むことにしました。国立大学からの先生を招いての、週3 時間のポルトガル語の授業もその一環です。知的養成へのもう一つの課題は、ウルメラ・プロジェクトのメンバーで奨学金を得て入学してきた生徒たちの低学力のことです。SDGs4 の包摂的教育(inclusiveeducation)を実現する試みですが、10 年間の取り組みを経て改善してゆかなければならない点も見えてきました。もし特別な世話を必要とする子どもたちを学校に迎えたのなら、招いた学校が入学後も継続して特別な世話をしなければ「投げ捨て教育(damping education)になってしまうということです。しかしながら他の学校で実現していないことが聖イグナチオ学院で実現しつつあるので(実際に医学部や法学部に進学した奨学生たちもいます)、工夫して奨学生たちの知的養成に一層取り組んでゆきたいと思います。